老いと祝福

  • 石丸昌彦著 ◆日本キリスト教団出版局
教会の本棚

◆石丸昌彦著
◆日本キリスト教団出版局
◆周知の通り日本は超高齢社会を迎えている。本書において著者は、聖書の信仰に立ち、専門的知見に基づいてこの現実に向き合っている。聖書は長寿が神の祝福のしるしであると語る(もとよりそれは短命だから祝福されていないということではない)。しかし著者によれば、老いが祝福であるためには「生きることに希望が伴っていなければ」(四〇頁)ならない。本書は老いの現実を分析し、様々な角度から老いを見直すことを通して、生きる希望の伴う老いを探求している。ご高齢の方だけが老いに直面しているのではない。誰もが老いていく過程にある。しかし「『老いていく』には『老化』とともに『加齢』の意味があり、終わりなき『成長』につながるもの」(二〇六頁)なのである。神が共にいる人生にこそ、この「終わりなき成長」が与えられていくのではないか。教会に若い方が少ないことは、教会の取り組むべき喫緊の課題である。しかし教会にご高齢の方が多いことは、教会にとってまことに大きな祝福である。あらゆる世代の方にお勧めしたい良書である。
(2023年6月25日 副牧師 川嶋 章弘)

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