四つの福音書、ただ一つの信仰

  • エチエンヌ・トロクメ著 ◆ 新教出版社
教会の本棚

◆ エチエンヌ・トロクメ著
◆ 新教出版社

■ 今年の壮年会のテキストは、松永希久夫著『イエスの生と死』です。イエスの生と死が私達にいかなる意味をもち、救いとなるのかを説明したものです。このことに関連し、一冊の本を紹介します。それが冒頭の本で、新約聖書学者による福音書についての本です。新約聖書が批判的に研究されるようになって以来、史的イエス(実際に地上の生涯を歩まれたイエス)とケリュグマのイエス(福音書に描かれているイエス)が果たして一致するか、しないかが問題とされてきました。そうした問題に取り組み、解決の糸口を示しているのが本書であります。この書は、まず四つの福音書の構造、成立の歴史的背景、イエス理解を記し、その後その源となる「一つ」に言及します。四つの福音書がいかにイエスを理解したか、またそのように理解した救済観、歴史的背景など、興味深い記述がなされています。四つの福音書は存在するが、その源はすべて私達が同じく信じるキリストへと向かう-そのことを再び確認させられる書です。  この書は短い書ですが、内容は学術的で興味深い研究書です。短いゆえに、何の説明もされないまま、研究の成果が記されている時があります。その点少し苦労するかもしれませんが、苦労して読むこともまた楽しいと考えます。

(2002年6月23日、壮年会だより、No.116号、伝道師 清野久貴)

TOP