◆ K・G・アッポルド著/徳善義和訳
◆ 教文館
■ 本書は、コンパクト・ヒストリーシリーズの一冊である。宗教改革は多くの諸相を持っていて、その歴史をコンパクトにまとめるのは難しい。しかし本書は、神学的な視点だけでなく、その時代の政治、経済、社会の視点からも歴史を概観している。宗教改革は真空状態に起こったのではなく、その前史を持ち、また教会内外の影響を複雑に受け、さらに広範囲に影響を及ぼした。本書では、前史としての中世キリスト教化の諸相に紙幅を割いている。ルターに比べカルヴァンへの言及が少ないが、著者の専門分野から考えると致し方ないだろう。その一方で、スカンディナビアへの宗教改革の波及についての記述は興味深い。またカトリック宗教改革についても触れている。宗教改革はいつ「終わった」のかについて、著者は「伝統的に言われている宗教改革の『終着点』を遥かに超えて伸びており、現在にまで続いている」と述べている。この視点から改めて宗教改革史を学ぶことによって、私たちは多くの気づきを与えられるのではないだろうか。
(2019年12月、伝道師 川嶋章弘)