神の民の信仰 旧約編

  • 左近淑 著 ◆ 日本キリスト教団出版局 ◆ 本体;1,800円
教会の本棚

◆ 左近淑 著
◆ 日本キリスト教団出版局
◆ 本体;1,800円

■聖書を読み始めた者にとって、39巻からなる旧約聖書は浩瀚で難解なものだと思います。物語や法や詩等、文書の形態も様々であるし、それぞれの書物が書かれた時代も様々です。自分一人で読もうとしても、それらが指し示す信仰の中心を読み取ることは容易なことではありません。聖書の文言を部分的に取り出し、自分なりに解釈し、日々の生活における教訓や倫理を読み取ろうとしてしまうと、聖書が語ろうとしている信仰の中心から逸れてしまうということも起こりかねないでしょう。聖書を信仰の書物として読むのであれば、常に、聖書が語りかける信仰の中心を知らされて行くことが大切です。著者がこの書物を記すに際してもっている問題意識は、日本において聖書宗教が変質しているということです。日本人の聖書の読み方は、「二階座敷の床の間で読む」ようなものだと言っています。聖書が個人の精神的な営みを充実させるためだけに読まれてしまう傾向があるというのと言うのです。そのような読み方は、まさに聖書が語りかける信仰の中心が深く知らされていない時に起こると言って良いでしょう。本書が見つめる聖書の信仰は、「神の民の信仰」という題に明確に示されています。それは、個人の悟りのようなものではなく、この世を神の民、神様の恵みの下に集められた信仰の共同体として歩むということです。本書の全体の章立ては、「神の民の成立(出エジプト)」、「神の民の特質(十戒)」、「神の民の信仰と課題」、「律法主義化と主イエスによる新しい共同体」、となっています。旧約聖書を理解する上で鍵となる聖句を引用しつつ、時代背景を解説しながら、神の民(イスラエル)の歴史を記すことによって、神の民として歩むことの幸いを分かりやすく記しています。更には、旧約の民の歩みから、新約聖書における神の民(教会)にどのようにつながって行くのかを記すことによって、福音全体の中心をも示してくれています。旧約聖書の信仰を通して、聖書全体を貫くメッセージが示される本です。
 

(2009年3月、副牧師 嶋田恵悟)

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