◆ リチャード・ボウカム著(山口希生・横田法路訳)
◆ 新教出版社
■ 本書は、OXFORD Very Short Introduction という幅広い学問分野の第一人者による入門書シリーズの一冊である。平易な文章で書かれたコンパクトな書物でありながら非常に読み応えがあった。原始キリスト教徒たちは、「復活の主こそ、ナザレのイエスだった」と信じた。著者は、この「ナザレのイエス」に焦点を置き、四つの福音書を「目撃者の証言」として読むことを試みている。四福音書が自由に用いられているが(訳注の聖書箇所の豊富さからも分かる)、三つの福音書(共観福音書)とヨハネ福音書の違いにも注意が払われている。著者の確信は、ある特定の時代を特定の場所で生きたイエスを四福音書から知ることができることにあるだろう。私たちもまた、歴史から切り離されたイエスではなく、歴史の中を生きたイエスを救い主であると信じている。本書を通して福音書の醍醐味に触れることができると共に、ややもすれば薄れがちな歴史を生きたイエスへの視点を取り戻すことができるのではないだろうか。
(2020年10月25日、伝道師 川嶋章弘)