◆ 徳善義和著
◆ 教文館
■ 本書は、FEBCで一二回に渡って放送されたものをテープ起こしし、本として整えたものである。そのために語りかけるような文章となっていて明解である。著者はルター研究の第一人者であり、本書ではルターの生涯を多様な側面から捉えている。聖書と格闘する中で福音を再発見し、聖書をドイツ語に翻訳し、宗教改革の最初の担い手となった宗教改革者としてのルターはよく知られている。しかし本書では、それだけでなく、ルターが記した手紙にも多く触れられていて、夫であり父であった家庭におけるルターや、子どもを亡くして悲しんでいる人や病の中にある人の魂の牧者としてのルターを知ることができる。またルターのユーモアに富んだ一面を垣間見ることができる手紙も紹介されていて興味深かった。「聖書を読む時には、試練のただ中で読め」は、晩年ルターが書き残した言葉とのことである。「聖書の運動としての宗教改革」を生き抜いたルターの生涯がよく表れている言葉ではないだろうか。
(2021年2月28日、伝道師 川嶋章弘)