◆ 日本聖書協会編
◆ 日本聖書協会
■ 『聖書 聖書協会共同訳』は、二〇一八年に出版された。刊行から三年が経ち、新しい訳に基づいた書物も増えてきている。詩編について言えば、元の文の構造や言葉が活かされた、原典の息吹が感じられる訳になっていると思う。本書は、翻訳に携わった五名の方々による詩編の入門書である。詩編の基礎知識が解説されている一章では、配列に注目する近年の詩編研究にも触れられている。詩編の中に復讐を願う言葉が含まれていることにつまずきを感じることもある。四章では、そのような詩編こそ私たちの信仰生活に必要であることが解説されている。聖書協会共同訳の日本語面での特徴が解説されている二章では、詩編の言葉が日本の短歌(斎藤茂吉、葛原妙子)に影響を及ぼしたことにも触れられていて興味深い。カトリック教会のミサで使われている『典礼聖歌』を手がかりとして詩編を日本語で歌うことについて解説している五章では、新鮮な学びを得られる。本書を通して、新しい翻訳を味わいつつ、広大な詩編の世界の一端に触れることができるだろう。
(2022年2月27日、副牧師 川嶋章弘)