神の物語としての聖書

  • J・ゴールディンゲイ著(本多峰子訳) ◆教文館
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◆J・ゴールディンゲイ著(本多峰子訳)
◆教文館
◆本書は、聖書の入門書としては珍しく、創世記からヨハネの黙示録まで順番に解説するのではなく、文学ジャンルごとに各書を解説している。第二部では「物語」が扱われているが、旧約聖書の物語だけでなく、新約聖書の福音書と使徒言行録も扱われていることに本著の特徴が表れている。詩編と哀歌を扱っている「祈りと賛美」(一三章)も興味深い。詩編が幾つかの類型に分類できることは知られているが、著者は「どうかお願いします」、「助けてください」のように、神への語りかけ方で分類していて、より詩編の祈りを身近に感じられる。旧約聖書学者である著者が、最終章で「今日、旧約聖書が持つ意味」として六つの点を指摘していることも意義深い。本書の終わりで著者は、神の物語である聖書を私たち自身の物語として扱い、神の言葉である聖書を私たち自身に向けられたものとして聞き、神の民の応答である聖書を私たち自身の応答とするよう私たちが招かれていると述べている。最終章だけでも一読の価値はある。
(2023年8月27日 副牧師 川嶋章弘)

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