キリスト教の揺籃期 -その誕生と成立-

  • エチエンヌ・トロクメ著、加藤隆訳 ◆ 新教出版社 ◆ 270頁/本体;2800円
教会の本棚

◆ エチエンヌ・トロクメ著、加藤隆訳
◆ 新教出版社
◆ 270頁/本体;2800円

■ 今回お勧めする本は、少し厚めでなかなか手に取ることができない本かもしれません。実際に234頁に亘り文章が記されており、さらに新約聖書について専門的な理解が記されているため、なかなか読もうという気にはならないかもしれません。しかし、あえてこの本を勧めてみたいと思います。なぜかといいますと、新約聖書が記された時、社会がいかなる状況であったかが記されているからです。この本はいいかえればキリスト教会が成立したばかりの歴史について記されている本です。その中で、できたばかりの教会について記されていると同時に、新約聖書のそれぞれがいかにして成立したかが記されているのです。

 聖書はあくまでもキリストの十字架と復活を証する書であり、それ以上でもそれ以外でもありません。なのに、なぜ福音書が4つもあり、それぞれが異なる救いの物語を記し、手紙において記されているキリストの姿が異なるのか。歴史上のキリストの事実はたった一度なのに、救い主の描き方が様々なのです。その違いに必ず何か意味があるのであり、現在の教会にもあてはまることが多々あるはずです。新約聖書をより良く読むためにも、この教会の歴史を無視することができません。そのためにも、この原始キリスト教史について一度触れておくことは有用だと思います。そのため、極力薄いものを探しました(もっと厚い本でしたらたくさんありますが、極力探してみました)。  最後に、前提として覚えていただきたいことは、歴史についての考察ですから、あくまでも様々な資料に基づいての筆者の推測です。この昔の教会の歴史について、様々な研究の結果が存在していることも事実です。ですから、この本が絶対というわけではなりません。しかし、通時的な一つの歴史の考察としてご利用ください。

(2002年10月20日、壮年会だより・第118号”ほん”、伝道師 清野久貴)

TOP